マンション管理士の森です。このコーナーでは、マンションを取り巻くトラブル事例を中心に毎回テーマを1つとりあげ解決策を見つけていきたいと思います。

今回は、ほとんどのマンションで大なり小なり悩みの種となっている「ペットの飼育問題」について考えてみましょう。

ペットの飼育については、区分所有法は次のように記載しております。

 

(規約事項)

第30条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

 

各マンションの実態に合わせて規約で定めなさいとうたっているだけです。

次に標準管理規約の関連条文をみますと以下のとおりです。

 

(規約及び総会の決議の遵守義務)

第3条 区分所有者は、円滑な共同生活を維持するため、この規約及び総会の決議を誠実に遵守しなければならない。

2 区分所有者は、同居する者に対してこの規約及び総会の決議を遵守させなければならない。

 

(専有部分の用途)

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

(使用細則)

第18条 対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。

 

この第18条に動物の飼育等の細則については使用細則で定めることが考えられる事項として取り上げられています。犬猫等のペットの飼育の可否などの基本的事項については管理規約で定めるべき事項となっております。が、その手続き方法又は具体的な飼育の方法や飼育に関する共用部分の利用方法、糞尿の処理他、詳細については、この「使用細則」に委ねることができます。

実態は、規約によりペットの飼育を容認しているマンションもあれば、逆に禁止している例も見受けられます。禁止している場合でも金魚や小鳥の飼育を想定して「小動物は可」としているものが多数あります。

今問題となっているマンションの多くは、規約で禁止としていてもその規約が守られていない、あるいは規約に原則として禁止、但し「小動物は可」とか「他人に危害を加える動物禁止」しているため、その「小動物」「危害を加える動物」の解釈により事実上長期にわたっての飼育が見逃されてきたケースで紛争が起こっています。

小動物とはどの程度の大きさを指すのか、他人に危害を加える動物に犬・猫が含まれるのか、人により判断が分かれるような「あいまい規定」で記載されていることから、それを管理すべき理事長・理事会役員の中でも論争のタネとなり、今となって禁止とも言いにくくなり、そのまま放置されているケースです。

将来のトラブルを防ぐため、ペットの種類・大きさ・飼い方などについて明確な細則を作っておきたいところです。

既にトラブルが発生しているマンションでは、明確な規約・細則を制定し、「現在飼育しているペット一代限り許可する」という、ひとつの妥協案を提示し解決を図っているケースがみられます。