前回は、「自主管理」について考えました。今回は、「滞納管理費等の請求」をテーマにします。

 

滞納管理費の問題は、滞納していた区分所有者の交代がある場合と無い場合でかなりの違いが出てきます。まず先に前者の場合について考えましょう。

 

持ち主が変わる場合には二つの場合があります。
一つは前の持ち主が死亡して相続人が相続したような場合です。この場合を包括承継と言います。
もう一つは、前の持ち主が売却したような場合です。この場合を特定承継と言います。

 

まず包括承継については、相続などによって前の持ち主の権利義務の全てが新しい持ち主に引き継がれますから、新しい持ち主に滞納管理費等を請求できます。

 

次に特定承継の場合ですが、管理組合は、前後の持ち主に対して、各々全額の請求ができます。
滞納管理費が50万円だとして、前の持ち主に25万円、新しい持ち主に25万円の請求ができるのではなく、両者に対して50万円の請求ができます。但し、二重にもらえるわけではありません。
どちらかより全額の返済を受けた時点で請求はできなくなります。法律は、滞納していた以前の区分所有者より当該不動産を購入した者にも過去の滞納分を支払う義務があることを認めています。

実際、区分所有者の交代があった場合には、滞納が解消されることが多くみられます。

 

問題は、区分所有者の交代がないまま滞納が続いた場合です。管理費等の滞納者に対する督促をどのように行うかは、多くの管理組合にとって頭の痛い問題となっています。

 

ある大手のマンション管理会社では、次のような方法をとっています。管理費は口座振替により毎月引き落とされているケースがほとんどです。

1ヶ月分が滞納された時点で管理会社の担当者より滞納者へ引き落とされていない旨連絡し、口座に管理費相当額を残高として残すように連絡します。

3ケ月分の滞納がハッキリした時点で、マンション管理組合の理事長名で管理費の支払督促状を発送します。

6ヶ月分滞納した場合は、内容証明郵便による督促状を発送するというものです。

サイクルの違いはあれ、多くの管理会社では、電話による請求→文書による請求→内容証明郵便、最終的に「少額訴訟」というコースで、進めています。

これで滞納が解消されれば問題ないのですが、実際には一時的に解消しても再度の滞納がすぐに発生したり、滞納額の一部だけが入金され、滞納状態の解消にはつながらないケースも多く残っています。

 

管理組合としてまず最初にやるべきことは、滞納者の状況を把握すべきです。単に怠けているだけなのか、本当にお金が無いのか。家族構成や生活状況、ローンの有無などをできる限り調査し、効果的な解決策を滞納者と一緒に考えてやる必要があります。

滞納者と言っても区分所有者ですし、コミュニティの一員です。単なる金貸しのように取り立てをしていても問題の解決にはなりません。かえって、揚げ足を取られたり、逆ギレされたりします。滞納者は、そういう状況に持ち込もうとしているかもしれません。

管理費等の滞納者への措置を検討する場合に重要なことは、あたりまえですが滞納されている原因の把握です。最終的に収入が少なく、今後も返済できるような収入のあてがない場合には「売却」することを薦めることもやむを得ないことと覚悟する必要があります。

 

面倒な手続もありますし、場合によってはいやな思いをすることも覚悟すべきです。
特に長期間・高額な滞納になってしまっている場合は、回収するためには、ほぼ確実に面倒な手続、いやな思いをします。一年交代制で務めている理事長や理事さんが任期中に処理をしたがらないのも無理からぬところがありますが、そんな時は、管理会社の担当者が役に立つかもしれません。