マンション管理士の森です。このコーナーでは、マンションを取り巻くトラブル事例を中心に毎回テーマを1つとりあげ解決策を見つけていきたいと思います。

 

前回は理事の選任問題をとりあげました、今回も引き続きこの選任問題について考えてみたいと思います。

「理事や理事長になりたがらない人が多く困っています」という相談事例の中で、「区分所有者と同居している家族の方も役員に含めたらどうか、顧問契約を結んでいるマンション管理士に役員になってもらってはどうか。」という意見が出てきました。役員になりたがらない人が多くなり、同居の親族や外部のマンション管理について知っている人を認めたらどうかという意見です。とくに世帯数の少ないマンションでこのケースがみられます。

区分所有者以外の方も役員に含めたほうが、管理組合の運営が円滑に行えると思われる場合があります。例えば、大規模修繕工事の実施及びその計画づくりなどは建築業界に明るい人を役員に当てたほうが経験・知識などの面からより効率的な支出ができるでしょう。また、防災管理にあたっても、それに精通した人を役員とする方がよりよい設備計画をつくることができるでしょう。

その場合、外部の者又は同居の区分所有者以外の者を役員とすることができるのか、が問題となります。

区分所有法は、理事長を含めて役員の資格については明確には規定していませんが、「管理規約」で「現に居住する組合員」と定めている管理組合が一般的です。したがって、選任にあたっては必ず総会の特別決議で規約を改正してから役員を選出するという手続きが必要となります。

なお、区分所有法は、管理組合の場合の管理者と(同法25条、66条)、法人管理組合の場合の理事及び監事について(同法49条、50条、66条)規定していますが、理事長を含めて役員の資格については明確には規定していません。これについていろいろな解釈があるようですが、本来、管理組合は、区分所有者だけで構成され、共用部分の維持・保全・管理を目的とする団体です(同法3条)。区分所有者の中から役員を選出することが原則となります。

上記のような大規模修繕工事や防災面での問題があった場合には、専門家と顧問契約を結ぶ,又は別途専門委員会を組織しその一員となってもらうなどの方法がとられています。 

 

≪参考≫

区分所有法

 

第三条

区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

 

第二十五条

  1. 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
  2. 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

 

第四十九条

  1. 管理組合法人には、理事を置かなければならない。
  2. 理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。
  3. 理事は、管理組合法人を代表する
  4. 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。
  5. 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によって、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によって管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。
  6. 理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
  7. 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(第四十九条の四第一項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。
  8. 第二十五条の規定は、理事に準用する。

 

第五十条  

  1. 管理組合法人には、監事を置かなければならない。
  2. 監事は、理事又は管理組合法人の使用人と兼ねてはならない。
  3. 監事の職務は、次のとおりとする。
    1. 管理組合法人の財産の状況を監査すること。
    2. 理事の業務の執行の状況を監査すること。
    3. 財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること。
    4. 前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること。
  4. 第二十五条、第四十九条第六項及び第七項並びに前条の規定は、監事に準用する。

 

多くの管理組合で採用されているマンション標準管理規約(単棟型)

(組合員の資格)

第三〇条

組合員の資格は、区分所有者となったときに取得し、区分所有者でなくなったときに喪失する。

 

(役員)

第三五条

  1. 管理組第35条管理組合に次の役員を置く。
    1. 理事長
    2. 副理事長○名
    3. 会計担当理事○名
    4. 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
    5. 監事○名
  2. 理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。
  3. 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。