今回の外壁タイル剥離現象の原因は

  1. 躯体コンクリートと下地モルタルとの間の界面接着力不足
    躯体コンクリート面の表面清掃不足
    躯体コンクリート面への目粗し処理等の接着力強化処置不足
  2. 下地モルタルの塗り厚過大
  3. タイルと接着モルタルの叩き圧力不足
  4. 下地モルタル材料の使用方法(使用法・要領通り使用していたか?)
  5. 伸縮緩衝目地を適切に配置していない

等の事象が見受けられます。

設計上のタイル工事の仕様は標準仕様書を採用していると思われます。

建築工事標準仕様書では、上記の項目等について記載しておりますので設計上のミスではなく、施工上の問題だと思われます。(木村健二一級建築士)

因って債務不履行、瑕疵担保責任ないし近時の最高裁判決で判示された不法行為責任を問うことが可能と考えます。

<売主に対して>

■瑕疵担保責任(民法634条)
・仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。

<施工業者に対して>

■最高裁判決(通称別府マンション事件)判示された不法行為に基づく損害賠償請求。

[最高裁判所第2小法廷平成17年(受)第702号損害賠償請求事件平成19年7月6日](別紙参照)

<品確法・他法令との関連について>

■品確法(住宅の品質確保の促進に関する法律)

品確法では、瑕疵担保責任の特例として「構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分」と限定して定めています。故に、今回の外壁タイルの剥離については、品確法により求償を求めていくのは難しいと思われます。

■建築基準法関連法令では、外壁タイルの剥離等に関する法的基準は定めておりませんので、建築基準法違反等には該当しないと思われます。

■消費者契約法

「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいいます。

消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項は、無効となります

<挙証問題・時効について>

契約書の瑕疵担保責任の条項は、民法の瑕疵担保責任の一般原則の特則(特別規定)に該当します。特則によって担保責任を免除したり、責任範囲を限定したり、時効期間を一般原則とは別に定めたりすることができます。もちろん、不法行為責任は、瑕疵担保責任とは別の法的原因に基づく責任であるので、瑕疵担保責任とは別個に請求することができる性質のものです。

 不法行為については故意や過失を損害賠償請求する側が立証する必要があります。一方,瑕疵担保についてはその点が不要とされます。

その結果,目的物に瑕疵がある場合それが相手方のせいで瑕疵ができたことについて立証する必要が不法行為の請求ではあるわけですが, 一方,瑕疵担保については不要になります。また、不法行為では賠償金を求めることはできますが、交換や修補などを求めることはできません。

このように契約関係があって損害を受けた場合には、債務不履行と不法行為の両方が通常成立します。

なお、挙証責任では次の違いがあります。

  • 不法行為   → 債権者に債務者の故意・過失を立証する責任があります。
  • 債務不履行 → 債務者の責に帰すべき事由は、債務者に立証する責任があります。

(つまり債務者は自分に落度でないことを立証しない限り責任を免れません)
その他、損害賠償請求権の消滅時効で違いが見られます。

  • 債務不履行による損害賠償請求権 →債権成立の時から10年
  • 不法行為による損害賠償請求権 →損害及び加害者を知ってから3年、又は発生から20年。(また、大阪地裁平成11年2月、瑕疵担保責任の期間制限の起算点について、単にクラックを発見した時点ではなく、弁護士の助言に基づいて専門業者に相談し、見積書の交付を受けた時としています。)

対応の方向性

通常売主に対する瑕疵担保責任を問うのがノーマルですが、瑕疵担保責任を問う場合、時効(10年)との兼ね合いがあり、この事案は不法行為責任を問うことになると思われます。

売買の瑕疵担保責任

売主に対する瑕疵担保責任がストレートな請求です。素朴に考えると,不動産の売買契約に不備が含まれていた。法律的には「隠れたる瑕疵」となります。その”不備(欠陥)”が容易には発見できない部分にあった,という場合は売主に責任が生じます。修繕する(費用を負担する)のが通常です。欠陥の程度が大きくて修繕できない(費用が極端に多額になる)場合は契約自体を解除できます。

瑕疵担保責任以外の解決策

【瑕疵ある建物建築→不法行為責任】

瑕疵ある建物建築を行った施工者等への不法行為に基づく損害賠償請求。勿論,この建築施工業者に建築を注文したのは,買主(現在の居住者)ではありません。そこで,一般的な「契約責任」(瑕疵担保責任含む)については,発注者以外は請求できないことになります。しかし「不法行為責任」(民法709条)については,前提として何らかの契約関係が必要ということはありません。そこで,直接は建築工事について関わりのない「施主から購入した者」も請求可能です。

・理論的には,建築施工業者が次のような義務を負うと考えます。

建築施工業者の負う義務

建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務。建物に欠陥があった場合,施工業者はこの「注意義務」に違反があったということなります。そこで,損害賠償を負担する義務が生じます。判例として[最高裁判所第2小法廷平成17年(受)第702号損害賠償請求事件平成19年7月6日]は実務的な意味を持つものです。

判例概要

建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者(以下,併せて「設計・施工者等」という。)は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。そして,設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計・施工者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。

居住者等が当該建物の建築主からその譲渡を受けた者であっても異なるところはない。

(略)

例えば,バルコニーの手すりの瑕疵であっても,これにより居住者等が通常の使用をしている際に転落するという,生命又は身体を危険にさらすようなものもあり得るのであり,そのような瑕疵があればその建物には建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があるというべきであって,建物の基礎や構造く体に瑕疵がある場合に限って不法行為責任が認められると解すべき理由もない。(PDF