12年目の大規模修繕工事のときなら、0.2×12年=2.4%程度であれば正常

外壁タイルの施工方法は、主に湿式工法と乾式工法の2種類存在します。

湿式工法は、いわゆるモルタルなどを使って、外壁タイルを下地に貼り付けていく方法です。

モルタルは、セメントと砂を水で練って作ります。

現場で水を使って作業するため、湿式工法と呼ばれます。

 

一方、乾式工法は、接着剤を用いて、下地に外壁タイルを貼り付けて行く工法です。

近年、接着剤の技術革新が進み、非常に丈夫で耐震性も格段に上がっています。

水を使わないため、乾式と呼ばれています

平成17年 国交省「公共建築工事標準仕様書」の指針

コンクリート下地については、以下の通りです。

湿式工法

  • 剥離防止のための清掃及び目荒しを確実に実施する
  • 下地面の精度は長さ2mにつき6mmを標準とし、不陸の著しい個所は不陸調整をする
  • 不陸調整用の補修モルタルは品質の保証された既製調合モルタルとする
  • 型枠剥離剤を用いた場合は、剥離剤が残り接着不良を起こすことがあるので、タイル貼り付け前に下地の清掃を、水洗い・ブラシ掛け等により実施する

タイルの浮きや剥離は、国交省等による明確な基準値が存在しない。0.2%/年は一つの目安になる  
―200件以上のタイル貼り工法の建物を調査からー

タイルの浮きに関するレポートとしては、建築家の鈴木哲夫氏が「防水ジャーナル」2016年1月号に注目すべき寄稿をされています。

実際に補修が行われた200件以上のタイル貼り工法の建物を調査し、施工不良があった場合とそうでない場合に層別して統計を取り、その結果、施工不良がない建物においては1年で0.19%という数字を出しています。

防水ジャーナル (誤解を招くタイル浮き率指標-その1その2

現在タイルの大量の浮き等で問題となっているマンションの多くは、平成17年以前に建設されたマンションか、以降であっても突貫工事等で標準仕様書通りに施工されなかったと思われるマンションです。

例えば、下地の清掃(散水・ケレン・離型剤の除去等)をきちんとやっていない、貼付けモルタルを塗布した後のオープンタイム(所定の接着強度が出るまでの待ち時間)を十分にとっていない等が考えられます。

外壁タイルの浮きや剥離自体は、瑕疵担保期間を10年と定めた「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」で明確に規定されているわけではなく、ほとんどの場合は売主とのアフターサービス基準で決められています。その期間も2年〜10年と幅が広く、また、2年〜5年が多いようです。

経年劣化によるタイルの浮きや剥離は全ての建物に対して同様の判断はできないと思いますが、正常な施工であれば 建築家の鈴木哲夫氏0.2%/年の指標が妥当と判断します。つまり、12年目の大規模修繕工事のときなら、0.2×12年=2.4%程度であれば正常で、これが8%や10%以上であったら何らかの施工不良が原因である可能性が高いと思われます。