前回までは、管理費や修繕積立金の「持ち逃げ」や「使い込み」の実態について具体的事例をみてきました。今回は将来必ず修繕・改修工事がつきまとうマンションという建物の購入の問題を考えてみたいと思います。将来発生するであろう維持管理費・改善改良費の中から、特に修繕費という観点からマンション購入の問題を考えます。

 

最近のマンションは居住者のさまざまな住まい方に対応できるように各種プランを揃え、また、室内の設備についても各種ニーズを取り込めるようになってきました。
しかし、入居当初の生活も径年ととともに家族構成も変わり、使われ方も多様になり、さらにより快適さを求めるようになりました。そのような中、日常生活での故障や使い勝手の悪さ、さらには将来の維持・改善工事などを念頭においてマンションを購入することは、素人の購入者にとっては難しい問題です。

建物に使われている建築や設備の材料は見える部分と隠避されている部分があります。見えている部分は比較的分かりやすいのですが、素人がそれを判断することは大変です。まして隠避されている部位の設備配管の収まりやコンクリートの質は、まったく解らないというのが普通です。細かく説明を始めれば、一冊の本が出来上がっても足りません。ここでは重要な点だけを取り上げます。

特に重要な以下の事項を予備知識として知っておくことが、購入の際のヒントになると思います。

 

コンクリートの品質

マンションの構造体の多くはコンクリート製です。一般にコンクリートの寿命は70~100年などと言われております。建物を長持ちさせる上で重要なものはこのコンクリートの性能です。よく雨漏れの問題がありますが、これは多くの場合、防水工事の不良かコンクリートのひび割れに起因することが原因です。但し、できたてのコンクリートが良いか悪いかを見分けることは、素人にはまず不可能ですので、専門家の協力を得て吟味することをお薦めします。コンクリートは取り換えが不可能な部位であり、建物の骨格です。建物がある限り付き合わなければなりません。

 

設備配管や機器の取り換え易さ

マンションには、給排水管・ポンプや電気配線・換気機器・都市ガス配管などがあり、それらは各々当然寿命があり、一定期間が経過すれば交換の必要が生じます。一般に配管の寿命は20年前後といわれておりますが、配管の取り換えが容易にできる設計になっているか否かを調べておきたいものです。(ここ10年内に新築されたマンションで使われているステンレス配管は、30~40年といわれています。)

メーターボックスの大きさや位置、屋内の横引き配管は二重床で配管経路は曲折の少ないことが修繕費軽減にプラスになります。モデルルームを一見しただけでは判断のつかないケースがほとんどです。竣工図書や設計図で確認する必要がありますので、やはり専門家の協力が必要です。

 

仕上げ材のメンテナンスの容易さ

マンションの仕上げ材全般について、清掃しやすく清潔で見栄えのする材料で構成されていることが必要です。外壁のタイル貼りマンションは最近多く見かけられます。塗装仕上げのマンションに比べ新築時にはコスト高にはなりますが、外観上美しい、汚れが付きにくい、汚れが付着した場合にも清掃がしやすいという利点があります。

 

以上3点を知っておいて下さい。

最後に、最近流行の高層マンションは眺めがよく人気があります。改修工事という観点から見た場合には非常にコスト高となるということを指摘させていただきます。足場を組むにも枠組み足場だけで処理ができない。高層階では風圧が強く塗料が塗った先から飛散するなどの問題があります。

 

将来の改修工事という観点から見たマンション選びでは、当然メンテナンス費用が安く済み、トータルコストを抑えるということが余裕資金を生み、将来の住環境を良くすることにつながるものと考えています。かたちあるものは必ず滅びます。なるべく長持ちさせて快適な住まいを得るには、普段からの「手入れ・・・清掃・点検・修繕・改良」が不可欠です。