賃借人が建物(部屋)の賃貸借契約を解除した場合、または不法行為により賃貸契約を解除した場合には、直ちに原状回復工事における費用負担割合について双方で協議が始まります。基本的には、賃貸人が原状回復工事を行うにあたり費用がどの程度かかるかの見積りを賃借人に示し、賃借人が合意すれば問題がないと思われますが、工事内容についてきちんと検証(確認)することが重要です。賃貸人にとっては、敷金返還負担の軽減を図って過大な原状回復工事見積りを提示する場合もあるからです。
原状回復工事のポイント
- ポイント1 : 退去するにあたり、賃貸人・賃借人双方が立会ってその時点の状況を確認し、修復するべき工事内容について合意しているか。(残置物についても確認)
入居時の立会チェックリストとの照合 - ポイント2 : 原状回復工事完了も含めた退去日について合意しているか。
- ポイント3 : 原状回復工事は、賃貸人指定業者で行うか賃借人指定業者で行うか協議できているか。
- ポイント4 : 賃貸人から提示された原状回復工事の見積り内容・項目は適正かどうか確認しているか。
- 工事内容が過大になっていないか(退去時立会い内容と整合しているか)
- 数量が過大になっていないか(退去時立会い内容と整合しているか)
- 工事価格(単価)が過大になっていないか
原状回復工事におけるトラブルの一例
- 特別にキズ等を付けたわけでもないのに畳表替えの費用を請求される。
→経年劣化の問題でもあり、通常の使用状態であれば賃貸人の負担と考えられる - 置家具を置いたことによる畳・カーペットのへこみ修復の費用を請求される。
→家具を設置したことだけによるへこみ・跡は通常の使用による損耗と考えられる。賃貸人の負担と考えられる。 - テレビ・冷蔵庫等の裏側の黒ずみにより壁クロスの張替費用を請求される。
→上記の場合には、一般的な生活をする上での通常使用と考えられるので、賃貸人の負担と考えられる。 - 壁クロスの一部を汚してしまったが、他の部分とクロスの色が違うので全面張替の費用を請求される。
→部汚損部分の費用は賃借人が負担、その他の部分については賃貸人の負担と考えられる。 - 網入りガラスが構造上の問題で破損していたが、その費用を請求される。
→網入りガラスの加工処理の問題なので自然に亀裂が発生した場合には賃貸人の負担と考えられる。 - 鍵を壊してもいないのに、鍵の取替え費用を請求される。
→入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題なので、賃貸人の負担と考えられる。
木村健二(日本住宅性能検査協会理事・一級建築士)