この相談事案は、2004年9月に70,150,000円を借入し、同年竣工した案件をレオパレス21社とのトラブルに嫌気がさして、2016年相続放棄したが、その際、同時に、2016年夏に自宅の名義を変更(長女A)に変更した。それである疑問が生じた「本当に責任財産(*)のみに限定されるのか、レオパレス21社にアパート土地建物をとられるだけで終了になるか。自宅は本当に大丈夫なのか」とても不安になった。

詐害行為とみられないか

依頼者は、「そもそも、私達が自宅の名義変更したのは、責任財産はレオパレス21社の土地建物のみなので、自宅は関係ないと思っていましたし、本来母子の2人で住んでいた家で、自宅だけは守ろうと、名義変更をしたのでたいへん驚いた」、「ノンリコの責任財産の限定は、相続人が相続放棄した場合はその「限定」は役に立たないのか」と疑問に思った。

弁護士は、「債権者が満足する金額が充当されればレオパレス21社の土地建物ですむが、実際になってみないと、どこまで突っ込んでくるかはわからない」

依頼者は「相続放棄をしても、債権者に自宅もとられるような状況に追い込まれる可能性あるときいてショックです。」

弁護士も「まずは、契約書をきちんと読み込める能力があるのはもちろんだが、契約書に書かれていても、実際どうL社が動いてくるか知っていないと答えられない。サブリースに詳しく、レオパレス21社の出方をわかっている実際の事例を経験している弁護士でないと対応できない だろう。」

依頼者は、なお、ローン会社(CS債券回収㈱)に母死亡の件を自分が連絡した際、「相続をどうするかは検討中」と言ってあります。「相続あるいは相続放棄の手続きはレオパレス21社を通じて書類を渡す」と言われ、「ローン会社のオーナーへの窓口がレオパレス21社に一本化していました。これでは、減額交渉時にローン会社が見方になってくれるとは思えません」。
「相続放棄の方が、多額の債務(現在:約4800万)をあと17年にわたって持ち続けるよりは安全ですが、詐害行為で自宅をとられるようになる可能性あり、訴えられ、賠償金など請求されるようになったらそれもたいへん苦痛です」。

ノンリコースならば詐害行為にあたらないのでは!?

弁護士は「自宅の名義変更等が、詐害行為にあたるのかについては、ノンリコースで守られるかどうかは、通常は問題ないと思うが、債権者の解釈によるので、確実に大丈夫とはいえない。レオパレス21社のサブリース家賃収入の内からだけ支払いにあてればよいとは明記されていない。債権者の判断によるので、どう出てくるかは判らない。追求してくるかもしれないし、何もないかもしれない。」

弁護士の結論

ADR担当弁護士は、依頼者に「ローン契約書に、不明瞭な表現があるので、今の状況とこれらの情報及び債務の金額を考えると、相続放棄の方が安全」との判断を示した。しかし、「相続放棄しても、2016年夏に自宅の名義変更をした件が、詐害行為(*)で債権者に訴えられて覆される可能性もある」との指摘をした。

この様な経過を経ながら、最終的に、物件売買が上手くいき、その売買代金でローン全額返済が出来たので、自宅は保全された。

レオパレス21社サブリース相談案件

Lアパート所在:東京都大田区
名義:母親(母 2015年11月死亡)
依頼者:(長女A) 
借入金額:70,150,000円
借入日:2004年9月
30年 ノンリコースローン(*)

 

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用語解説

ノンリコースローンとは (金融・経済用語辞典より)

ノンリコースローン(non recourse debt)とは、日本語では非遡及融資とも呼ばれ、ローン等の返済についての原資となる範囲に限定を加えた融資の方法。通常は責任財産となる原資からのキャッシュフローを返済原資とし、その範囲以上の返済義務を負わない。

一般的な日本の住宅ローンなどの借入は「リコースローン」と呼ばれるもので、アメリカにおける住宅ローンはこの「ノンリコースローン」が主流となっている。

例えば、通常の住宅ローンの場合を考えると、債務者がローンの支払いができなくなった場合、担保となっている住宅を売却する。さらに、それでも借金が残った場合であっても債務者は残りの債務の支払い義務がある。
一方で、ノンリコースローンの場合、例えばローンの担保となっている住宅のみが責任財産となり、仮に担保を売却しても債務が残ったとしても債務者はこれを越える責任を負わない。

簡単に説明をすると、5000万円の借入を行い、この担保としてAという物件を差し出しているとする。通常のローン(リコースローン)の場合、借入の返済ができなかった場合は担保物件Aが競売に掛けられ売却されるが、売却してもまだ借入の返済ができない場合、その借入の残りは借り手に遡及され、支払いを続けなければならない。
対してノンリコースローンの場合は、返済できなくても、担保物件Aを手放せば、その売却代金が借入金額に及ばなくても追加の支払いは必要なくなる。

債務者にとっては、担保以上の責任を負わなくてよいというメリットがあるが、その分銀行側が逆にリスクを抱えることになる。通常ノンリコースローンを利用する場合は当然その分のプレミアム(上乗せ金利)がかかる上、融資に対する審査(主に物件に対する)は厳しくなる。

一般的には不動産に対する分野での利用が多いが、これ以外であっても比較的安定したキャッシュフローが期待できる動産に対してもノンリコースローンが設定される場合がある。

責任財産

<広義>
強制執行の直接の目的物である財産・権利。
<狭義>
金銭債権の強制執行の際に,換価等のために目的物となりうる一切の財産。

詐害行為

債務者が債権者を害することをはかって,自己の財産を減少させる法律行為をいう。たとえば,債権者から差押えを受けそうになったので,債務者はほかに資産がないにもかかわらず,差押えを免れるため財産を他人に贈与するようなことである。民法は,債務者の詐害行為に対して債権者を保護するため債権者取消権を認めている (424条) 。