前回は、将来発生するであろう維持管理費、修繕改良費という観点からマンションの購入を考えました。今回は「修繕積立金」と「管理費」を明確に区分する必要性について考えていきます。
最初にマンション標準管理規約から用語の定義を確認したいと思います。マンション標準管理規約(単棟型)では、第25条以下で次のように規定しています。
(管理費等)
第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
一 管理費
二 修繕積立金
2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。
(管理費)
第27条 管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。
一 管理員人件費
二 公租公課
三 共用設備の保守維持費及び運転費
四 備品費、通信費その他の事務費
五 共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料
六 経常的な補修費
七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
八 委託業務費
九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
十 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用
十一 管理組合の運営に要する費用
十二 その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用
(修繕積立金)
第28条 管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
二 不測の事故その他の特別の事由により必要となる修繕
三 敷地及び共用部分等の変更
四 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査
五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
2 前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建替え決議」という。)
又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であっても、マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下 本項において「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合(以下「建替組合」という。)の設立の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
3 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償還に充てることができる。
4 修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない。
上記のように規定されており、管理費は管理人の給与、建物廊下の清掃費、電気水道などの光熱費、植栽の剪定費、管理会社への委託費などをさし、修繕積立金は計画修繕(大規模修繕工事や中規模修繕工事)を行うために毎月積み立てていくものです。
見方を変えれば、管理費は毎年の日常的な管理に要する費用として予算が組まれ、それにより徴収額が決められますが、修繕積立金は単年度で予算で決めることはできません。長期的な計画修繕額によりその金額が決まってくるものです。
したがって、管理費と修繕積立金はそれぞれ独立したものとして区分けし、その金額を各々決定し管理していくことが重要です。
ところが実際には、このような性格の異なる二つのものを同一会計で行っていたり、管理費の30%を修繕積立金としていたり、全ての修繕工事及び植栽剪定費用を積立金で賄うというケースがみられます。設備点検の費用なども修繕積立金で処理したりしている管理組合もあります。上記の規約の趣旨から見れば非常に問題が残ります。
原因は、管理組合の役員及び区分所有者の理解不足や管理費の徴収金額不足が原因で、管理費で不足するために、修繕積立金で賄っているケースが多々あります。これを長年続けますと、外壁改修工事や給水管更新工事などの際に修繕積立金不足が発生し、一時徴収や修繕積立金の大幅な値上げを余儀なくされ、総会などが紛糾する大きな原因となります。
これを防ぐためには
- 修繕積立金で賄う修繕工事の範囲を明確にしておくこと
- 単年度会計予算で処理できる管理費の適正な金額を徴収すること
- 長期修繕計画表などを定期的に見直し適正な修繕積立金をストックいておくこと
以上の三点が重要となります。
標準管理規約の定義を参考に管理費・修繕費の区分を明確にしましょう。管理費は、一年間に日常的に発生している費用の合計なのでその金額をつかむことは比較的容易です。その金額に不足が生じないように管理費を徴収するだけです。
長期修繕計画費は、将来の10年20年先を見越したプランを設定するため、積算した人の考え方、採用した工法の違いなどにより大きく違うケースがあります。また、物価の変動要素もあります。改修工事の技術的な進歩による費用の軽減なども考えられ定期的な見直しが望まれるところです。