「不動産投資は節税になる」とよく宣伝されています。投資用不動産を購入すれば、簡単に利益を確保した上で、損益通算により本業も含めた税金の圧縮ができると言うのです。

相続税対策として、サラリーマンに新築区分マンションを販売する際にも、所得税の減税になると説明されているケースが見られます。

しかしながら実際には、不動産投資による節税効果はかなり限定されたものです。「現金での物件購入が条件」など特定の条件下で期待できるものであり、融資を使って物件を購入しインカムやキャピタルゲインで確実に利益を出す「普通の不動産投資」では、節税はほぼ不可能です。ローンの返済が終わるまではインカムはほとんど赤字になります。

現金一括購入の場合

物件価格:1500万円
消費税8%:120万円

住宅ローンを15年で組む場合

※固定金利フラット35。
〇利率1.49%を採用 〇住宅ローン減税は、2013年入居で一般住宅を想定

物件価格:1500万円
消費税8%:120万円
利息:176万円
事務手数料:15万円
住宅ローン減税額:10年間合計 103万円

つまり、通常の固定金利などの住宅ローンを組むと、1500万円の場合、利息が176万円で減税額は103万円と、利息が減税額を超えてしまっているため、一括購入の方がメリットが大きいという結論になります。一括購入ができる資金があるのであれば、住宅ローンを利用すると損をしてしまうということです。

住宅ローン比較ラボより

不動産の税務に精通した税理士に

不動産投資の税務については、その他にも「法人化が有効」との声もよく聞こえてきます。個人がいいのか法人がいいのかは、さまざまな条件によって異なります。

不動産投資の税務はこのように非常に複雑なので、税理士に任せる人がほとんどしょう。ただ、税理士の中には不動産の税務に精通していない人が多く見受けられます。本来はもっと節税できる状況でありながら、適切な対策がとられていないケースは珍しくありません。

税金対策でも、不動産には不都合な真実が多々潜んでいるのです。

市況では、「破綻リスクが高まっている」

センターの相談事例ですが、高年収のサラリーマンで、融資を受けやすい地方銀行を使い、個人名義で、1Rマンションを購入した人です。法人名義で使える金融機関があるのにもかかわらず「まずは個人名義で実績をつくりましょう」「融資がついた順で購入できるので、融資結果が速く出るこの金融機関しか使えません」などと業者から言われて個人名義で購入してしまうケースです。

限度額に近いようなオーバーローンを組み、個人の属性をギリギリまで使い切ってしまうため、急遽の借入(補修等)の融資が通らない事態に陥ってしまう可能性があります。

数年前であれば今より安い価格で購入できて、高利回りが得られる好条件の物件がありました。収益性が高ければ、例え金利の高い銀行からフルローンで借りていても、少々収益計算が甘くても、破綻する可能性が少ない状況でした。しかし、物件価格が上昇傾向にある今の市況では、「破綻リスクが高まっている」と言わざるを得ません。

医者や外資系サラリーマンがターゲット

センターの相談事例からですが、名前を聞けば誰もが知る株式上場されているような大手業者の中でも詐欺的な行為を行なう業者もいますし、銀行も銀行で、3日でアパートローンの融資をつける。物件調査も行っていない場合もあります。そのような観点から言えば、不動産業者だけではなく不動産投資コンサルタントや、著名投資家などにも気をつける必要があるのです。

 

大谷昭二(日本住宅性能検査協会理事長)

【参考】

自己破産する家主が増加〔全賃〕