日本住宅性能検査協会 【建物検査研究会】

一級建築士を中心とした、建築系専門資格者によって構成される研究会です。営利企業とは異なるNPOとしての客観的・公正な支点から、適切な建物検査のあり方を研究しています。第三者として厳しい判断やアドバイスを行い、消費者が安心して住宅を購入できる環境作りを目指します。 

原告の年齢や身長に限りなく配慮した設計・施工をすべきであったのに、打ち合わせ不足に由来する設置位置の誤りなど、数々の瑕疵(カシ)を細かく認定。

Q 設備の設置等について、可能な限り原告の身長や年齢に配慮した設計、施工をすることが本件請負契約の一内容となっていたが、実行されなかったので、瑕疵修補相当額と弁護費用を請求したい。

A 原告の年齢や身長に限りなく配慮した設計・施工をすべきであったのに、窓や鏡、ユニットバスや換気扇スイッチなどの位置が高すぎて不便を来していることを中心に、打ち合わせ不足に由来する床暖房の設置位置の誤りなど、数々の瑕疵(カシ)を細かく認定。(京都地裁平成13年10月30日判決)

判決内容

【建物プロフィール】

軽量鉄骨造平屋建て居宅

【入手経路】

平成7年12月1日 請負契約(請負代金2100万円、その他追加・変更により2058万円)

平成8年3月23日 完成、引渡し

【相手方】

請負人(建築会社)

【法律構成】

請負人の瑕疵担保責任(瑕疵修補に代わる損害賠償請求)

二重請求・架空請求・不当高額請求に基づく不等利得

債務不履行に基づく調査費用・慰謝料・弁護士費用の請求

【期間制限】

争点になっていない。

【判決の結論】

瑕疵修補相当額と弁護士費用を認定。

請求額⇒762万円

認容額⇒466万円

【認定された欠陥】

原告の年齢や身長に限りなく配慮した設計・施工をすべきであったのに、窓や鏡、ユニットバスや換気扇スイッチなどの位置が高すぎて不便を来していることを中心に、打ち合わせ不足に由来する床暖房の設置位置の誤りなど、数々の瑕疵(カシ)を細かく認定。

【コメント】

  • 身長137cmの小柄な原告にとっては、プレハブ住宅の標準仕様の設備では、出窓に鍵に手が届かない、玄関の覗きアイがのぞけないなど、諸々の不自由を強いられることになる。原告は契約締結当初からのその点への配慮を求めていたことから、「設備の設置などについて、可能な限り原告の身長や年齢に配慮した設計、施工することが本件請負契約の一内容となっていた」と認定された。そして、打ち合わせ不足や被告の配慮不足の結果、原告が不自由を強いられた部分などを瑕疵として細かく認定し、その修補相当額を損害とした。
  • 調査費用については、建物の傾きを調査するためのものであったが、調査結果が補修を要するほどの傾きではなかったことから、その費用は損害と認定されなかった。
  • 慰謝料については、「財産権が侵害された場合、・・・・・・財産的損害が賠償されれば、特段の事情のない限り、精神的損害も一応回復されたとみるべきである」との一般論を述べたうえ、原告の精神的苦痛は、「建築した家屋に瑕疵があった場合に建築主が一般的に感じる苦痛の範囲内である・・・・・・特段の事情ありと認めるには不十分である」として、否定された。
  • 二重請求・架空請求などの不当利得については、すべて否定された。

用語解説

不当利得とは

不当利得(不当利得返還請求権)民703,704条)「不当利得」とは、法律上の原因がないのに他人の財産または労務によって利益を受けることをいう。このとき利益者は、その利得を返還する債務を負う。  <例えば 売買において、おつりを多くもらい過ぎたとき、もらい過ぎた分は返還しなければならない>(権利の消滅)・不当利得返還請求権の時効消滅損害賠償請求権3年の時効で消滅するのに対し、不当利得返還請求権は、一般の債権と同様、10年の時効で消滅する(167)。第703条(不当利得の返還義務)法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受けそのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度においてこれを返還する義務を負う

 

<参考文献>

判例タイムズ社

民事法研究会

 

 

日本住宅性能検査協会 【建物検査研究会】