原状回復をするにあたっては、必ず原状回復範囲問題・金銭的負担割合問題・期日(期限)的問題等が発生してまいります。この事は、第1回でも話をしましたように契約の解除や不法行為があった時に原状回復という行為が発生するものですから、原状回復時のトラブルを防止・予防するには、契約時にしっかりと特約も含めた契約条項を把握して理解しておくことが重要です。

トラブル防止・予防のポイント

    1. 契約書の原状回復に関する条件等の確認
      ・賃貸人は賃借人に対して原状回復の内容をきちんと説明しているかを確認
      ・賃貸人も後日のトラブルを避けたいと思っていれば、賃借人がきちんと理解してるか認識しているかを再確認するでしょう
    2. 特約についての確認
      ・建物(部屋)の賃貸借契約において特約を付ける場合には特に留意する必要があります。

      1. 賃借人が、特約において通常の原状回復義務を超えた修理等の義務を負うことにつて認識しているか。
      2. 賃借人が、特約における負担義務について同意の意思表示をしているか。
      3. 特約の必要性があるか。特約を付ける合理的理由があるか。
    3. 契約時における物件の現地確認
      ・必ず賃貸人・賃借人双方が立会い、物件の状況をチェックリスト等に記録して双方が確認しておく
      ・後日のために、写真にて入居時(契約時)の記録を取っておくこともポイントとなります ・特に居抜きでの賃貸をする建物(部屋)の場合には、備品等も含めた状況写真記録等が重要です(居抜きの場合の「原状」については、どこまでを原状とするかを双方で事前に決めておくことがポイント)
      ・特に設備的(電気・給排水・空調等)な確認は見落としがちになるので注意が必要です

 
原状回復の基礎知識のおさらい

民法における原状回復義務の規定は強硬法規(当事者間の合意では否定することができない規定)ではありません。賃貸借契約の場合には、原状回復義務そのものを規定する規定はありません。ゆえに、賃貸借契約の場合の原状回復義務は契約当事者間の合意で発生いたします。
そこで、原状回復の「原状」とはどの時点とするかは、賃貸借契約締結当事者の合意で決めることができます。
第1回でも話しましたように、国土交通省のガイドラインでは「通常の使用」をしていた場合「経年劣化」も加味して、「賃借人が借りた当時の状態に戻すことではない」ことが原状回復の基礎となります。

木村健二(日本住宅性能検査協会理事・一級建築士)